2019年5月のプレイリスト/アウト・オブ・タッチ

こんばんは。

 

ゴールデンウィークに家族で福島に旅行に行った(弟3はゴールデンウィーク中も毎日部活があるため不在)。車で移動している時間に、弟2がポリス、エア・サプライ、ホール&オーツ、などの懐かしい曲をかけた。エア・サプライのロスト・イン・ラブが流れると弟1も弟2も当たり前のように歌詞を完璧に覚えて歌っていて、この家の通過儀礼のようだなと思った。旅行は楽しかったので、ゴールデンウィークが明けてもこれらの曲をたまに聴いて旅行を思い出していた。

 

私はホール&オーツのアウト・オブ・タッチが好きである。プライベート・アイズやリッチ・ガールやウェイト・フォー・ミーよりも。いや、みんな同じくらい、すごく好きなのだが、アウト・オブ・タッチは好き嫌いとは別に、思うところがあるのだ。

 

幼少期の私は、当然ながら車内オーディオの主導権は握っておらず(今は弟2が全てを掌握している)、両親が時系列を無視してぐちゃぐちゃに聴いている曲を、時系列が不明なままぐちゃぐちゃに聴いていたし、私は生まれていないような時代の曲が多かったから、この曲は当時すごく売れたとか、人気があったという感覚もない。しかし私は大体このバンドがどのあたりでこの曲を書いたとか、どの曲が特に人気があったかは大体わかった。特に、曲を書いた時期についての予想は本当に正確だった。そして私はきまって、バンドが彼らの活動の後半で書いた曲を特に好きになった。これは好きなバンドほど顕著だった。

 

先ほど例に挙げたホール&オーツの4曲の中で、1番後にリリースされたのがアウト・オブ・タッチである。この曲は「熟成」「結集」という言葉を連想させる。ちなみに他の3曲は「直感的」あたりだと思う。

 

長く続いたバンドには流れがある。私の知る限りでは、長く続いたバンドの最大のヒット曲がバンドの終了間際にあるということは少ないような気がする。そして最大のヒット曲となる曲は「直感的」な曲が多い。

 

音楽の楽しみ方は人それぞれだろう。作った人間・メディアなどのバックグラウンドを考えず、単純に曲の良し悪しのみに焦点を当てて音楽を聴く。これはとても正しい。しかし自分はあまりこういう楽しみ方ができないのだ。映画のサウンドトラックを聴けばその曲が流れていたシーンを思い出すし、歌詞の意味やバンドの流れをそれとなく感じて感情移入してしまう。感情移入しないわけがないのだ。

 

アウト・オブ・タッチにはそういう感情移入をさせる力がある。泣かせるような曲調だとか、そういう話ではない。流れを感じるのだ。その曲単体でみれば全然そんな曲じゃないのになぜか終わりや集大成を感じる。バンドとして熟成されて、今まで積み上げたものを全て結集させる。迷わず走り抜けるのではなく、注意深く歩く。バンドの曲を隅々まで聴くと、不思議とこういう流れを感じる瞬間がある(何度も言うが、曲調が感動的だとかそういう問題ではない)。

 

「熟成」は、ホール&オーツでいうとアウト・オブ・タッチだし、エア・サプライでいうとスウィート・ドリームスだと感じる。「熟成」には、例えば普段とは違った試みをしてもうまく形になる、安定感みたいなものも含まれている。注意深く歩くのだ。

 

「直感的」は、ホール&オーツでいうと他に挙げた3曲だし、エア・サプライでいうとロスト・イン・ラブやオール・アウト・オブ・ラブあたりだ。「直感的」は、「個性」や「才能」とも近い。とにかく彼らが元々持っていたものの割合が大きいように感じる。ちなみに弟2はどのバンドについても私が「直感的」に分類している曲が好きである。

 

ポリスについてはちょっと話が別である。ポリスにエブリ・ブレス・ユー・テイクという曲がある。私はこの曲はバンドの初期に書かれたものだろうと長い間思っていたのだが、実はバンドが終わる間際に書かれたものだそうだ。しかもポリスの最大のヒット曲らしい(と父に聞いた)。

 

ポリスはとても「熟成」されたバンドだった。例えばドラムのスチュアート・コープランドの演奏にはまさにこの言葉がぴったりだ(もっとも、技術的なことはドラムについてしかわからないが)。1000年くらい生きた人のドラムを聴いているように感じる。上手い、とも、センスがある、とも少し違う(もちろんとてつもなく上手いしセンスがあるのだが)。やはり「熟成」がぴったりだ。

 

そして、ポリスには生きた「流れ」みたいなものが感じられない。ポリスの好きな曲をあげるとしたらシンクロニシティ2だが、メッセージ・イン・ア・ボトルのようにリリース年がかけ離れている曲とも同じような雰囲気を感じる。聴いていて同じような気持ちになる。確かに、1000歳の人が書いた曲と、その人が1010歳になって書いた曲が大きく違うことはないのかもしれない。少なくとも20歳と30歳ほどの相違はないだろう。

 

ところで、私はなぜ「熟成」が好きなのだろう。これは、私が音楽に求めているものを顕著に表しているはずだ。

 

おそらく、未来に希望を持ちたいのだと思う。とても単純な答えだ。今日より明日が良くなって欲しい。無い物ねだりをしない。だから努力したところで手に入らないような「直感的」よりも、バンドも終わり間際になり、「直感的」が出てこない、でも自分たちが今持っているもの、積み上げてきたもの全てを掻き集めて作った「熟成」に惹かれるのだと思う。もちろん私も楽曲として優れているとか、完成度が高い、みたいな視点は別のところに常に持っているが、楽しんでやっているわけではない。それは勉強するのと大体同じ。純粋に楽しんでいる・充実感を感じるのは、その前に散々述べた方の聴き方だ。

 

2019年5月のプレイリスト

https://music.apple.com/jp/playlist/2019%E5%B9%B45%E6%9C%88/pl.u-RRbVVKJt1D7xdZ

 

ところで、今週末に日本ダービーを見に行く。このレースの結果次第で秋にフランスに行けることになる。フランスに行けることになったら、2019年5月は完ぺきだ。